ブルーベリーの新梢が順調に伸びていたのに、ある日突然、先端の新芽だけがしおれている。
このような症状が出たときは、シャシャンボツバメスガの幼虫による食害かもしれません。
夏剪定で樹形を整え、狙った方向へ新梢を伸ばしていても、先端を食べられてしまうと、来年実をつける枝を失うことがあります。
この記事では、シャシャンボツバメスガの被害の見分け方、薬剤による対策、被害枝の切り戻し方、切った枝を挿し木にする方法まで、順番に紹介します。
この記事で分かること
- シャシャンボツバメスガの被害の見分け方
- ゼンターリ顆粒水和剤の使い方
- エクシレルSEの使い方
- 薬剤を散布するタイミング
- 被害枝の切り戻し方
- 切った枝を挿し木にする方法
シャシャンボツバメスガとは
シャシャンボツバメスガは、ブルーベリーと同じスノキ属の植物を加害する小さな蛾です。
幼虫は、柔らかい新梢の先端付近を食べたあと、新梢の内部へ入り込みます。
枝の内部を食べ進むと、先端まで水分が届きにくくなり、新しい葉がまとまってしおれます。
シャシャンボツバメスガの被害を放置すると、新梢の先端が枯れ、来年実をつける結果枝候補を失うことがあります。


水切れとの見分け方
見分けるポイントは、株全体ではなく、一本の新梢だけが急にしおれることです。
水切れの場合は、複数の枝や株全体の葉がしおれやすくなります。
一方、シャシャンボツバメスガの被害では、次のような症状が見られます。
- 一部の新梢だけが垂れ下がる
- 先端付近の葉がまとまってしおれる
- しおれた部分の下に小さな穴がある
- 穴の周辺に虫のふんが付いている
枝を切って縦に割ると、内部から幼虫や、枝の中を食べ進んだ跡が見つかることもあります。
注意点
新梢のしおれは、枝枯れ性の病害や枝の傷でも起こります。穴や虫のふんが見つからない場合は、病気や物理的な損傷など、ほかの原因も確認してください。

防除で一番重要なのは早期発見
シャシャンボツバメスガ対策で一番重要なのは、幼虫が新梢の奥深くへ入る前に見つけることです。
幼虫が枝の内部へ完全に入り込んでしまうと、葉に散布した薬剤が届きにくくなります。
特に夏剪定のあと、新梢が勢いよく伸びる時期は、水やりをしながら次の部分を確認します。
- 新梢の先端が急に垂れていないか
- 柔らかい葉に食べられた跡がないか
- 新梢に小さな穴がないか
- 穴の周辺に虫のふんが付いていないか
先端が急にしおれていたら、できるだけその日のうちに確認します。
早く見つければ、残せる葉や芽が多くなり、被害枝を来年につながる枝へ立て直せる可能性も高くなります。

ゼンターリ顆粒水和剤はどう効く?
ゼンターリ顆粒水和剤は、バチルス・チューリンゲンシスという細菌を利用したBT剤です。
幼虫が薬剤の付いた葉や新芽を食べ、有効成分を体内へ取り込むことで作用します。
薬剤を食べた幼虫は、しだいに葉を食べられなくなり、その後、駆除されます。
成虫を追い払う忌避剤ではないため、散布しても成虫の飛来や産卵そのものを止めることはできません。



BT剤はシャシャンボツバメスガにも作用する?
奈良県農業技術センターが行った試験では、BT剤がシャシャンボツバメスガの幼虫に高い防除効果を示したと報告されています。
ただし、試験でBT剤の効果が確認されたことと、現在のゼンターリ顆粒水和剤の農薬登録は別の話です。
現在のゼンターリ顆粒水和剤には、適用害虫として「シャシャンボツバメスガ」という名前は記載されていません。
そのため、ゼンターリ顆粒水和剤をシャシャンボツバメスガ専用の薬剤として散布することはできません。
ブルーベリーでのゼンターリの登録内容
現在、ゼンターリ顆粒水和剤は、果樹類のハマキムシ類に次の内容で登録されています。
| 項目 | 登録内容 |
|---|---|
| 対象作物 | 果樹類 |
| 対象害虫 | ハマキムシ類 |
| 希釈倍数 | 1000倍 |
| 使用時期 | 発生初期、収穫前日まで |
| 使用回数 | 制限なし |
| 使用方法 | 散布 |
ブルーベリーでハマキムシ類が発生している場合は、ハマキムシ類の防除を目的として、ラベルどおり1000倍で散布できます。
その散布によって、同じ時期に新梢にいるシャシャンボツバメスガの幼虫にも作用するのはかまいません。


農薬使用の基本
ゼンターリ顆粒水和剤は、登録のあるハマキムシ類を対象として、適用作物、希釈倍数、使用時期などを守って使用します。
ゼンターリ1000倍液の作り方
1リットル作る場合
ゼンターリの1000倍液を1リットル作る場合は、次の量を使用します。
- 水:1リットル
- ゼンターリ顆粒水和剤:1グラム
- アビオンE:0.5~2ミリリットルの範囲
- 計量器
- かき混ぜ棒
- スプレーボトル
- 容器に水を約500ミリリットル入れます。
- ゼンターリ顆粒水和剤を1グラム(小さじ1/4がひとつの目安)加えます。
- かき混ぜ棒で、粉が全体に分散するまでよく混ぜます。
- 水を追加し、合計1リットルにします。
ただし、計量スプーンの形や薬剤の入れ方によって重さが変わるため、可能であればデジタルスケールで量る方が正確です。

アビオンEを加える場合
アビオンEは、薬剤を葉へ付着させやすくするパラフィン系の有機JASにも対応している展着剤です。

果樹類に殺虫剤と一緒に使用する場合は、散布液1リットル当たり0.5~2ミリリットルが使用範囲です。
今回は中間量となる1.25ミリリットルを加えます。
半球形ですり切り1.25ミリリットルの小さじ4分の1計量スプーンであれば、すり切り1杯が目安です。
アビオンEを加えたあとは、もう一度よく混ぜてからスプレーボトルへ移します。
散布液は作り置きせず、その日のうちに使い切ります。


有機JAS規格の栽培で使用できる資材
ゼンターリ顆粒水和剤とアビオンEは、有機JAS規格による栽培で使用できる資材です。
有機JASとは、国が定めた基準に従い、化学合成農薬や化学肥料の使用を避けることを基本とした有機農産物の認証制度です。
ただし、これらの資材を使用しただけで、栽培したブルーベリーを「有機」や「オーガニック」と表示できるわけではありません。
有機JASの表示には、登録認証機関による認証が必要です。
ゼンターリを散布するポイント
ゼンターリは、幼虫が薬剤の付いた葉を食べることで作用します。
そのため、幼虫が新梢内部へ入る前の発生初期に散布することが重要です。
特に、次の部分へ散布ムラがないように丁寧に散布します。
- 新梢の先端
- 開き始めた柔らかい葉
- 葉の表裏
- 幼虫が食べそうな新芽
散布後に伸びた新芽には、薬剤が付いていません。
使用回数の制限はありませんが、毎日散布するのではなく、新梢の状態や害虫の発生を観察し、必要なときにラベルどおり散布します。

エクシレルSEはどう効く?
エクシレルSEの有効成分は、シアントラニリプロールです。
主に、幼虫が薬剤の付いた部分を食べることで体内へ取り込まれ、筋肉の働きに作用して、速やかに摂食活動を止めます。
摂食による取り込みに加え、接触による作用もあります。
また、葉面から葉の内部へ入り込む浸達性と局所的な移行性があり、葉の食害部分へ有効成分が届きやすいのが特徴です。
ただし、散布すれば新芽を完全に無傷で守れるわけではありません。幼虫が薬剤を取り込むまでに、かじった跡や小さな穴が残ることがあります。
また、すでに新梢の奥深くへ入った幼虫まで、確実に薬剤が届くという意味ではありません。
エクシレルSEも、被害が進んでからではなく、幼虫が枝の内部へ入る前の発生初期に使うのが基本です。


ブルーベリーでのエクシレルSEの登録内容
現在、エクシレルSEはブルーベリーに対して、次の害虫で登録があります。
- アブラムシ類
- オウトウショウジョウバエ
- ケムシ類
ケムシ類での登録内容は次のとおりです。
| 項目 | 登録内容 |
|---|---|
| 対象作物 | ブルーベリー |
| 対象害虫 | ケムシ類 |
| 希釈倍数 | 5000倍 |
| 使用時期 | 収穫前日まで |
| 本剤の使用回数 | 3回以内 |
| シアントラニリプロールを含む農薬の総使用回数 | 3回以内 |
| 使用方法 | 散布 |
エクシレルSEにも、適用害虫として「シャシャンボツバメスガ」という名前の登録はありません。
ブルーベリーでケムシ類が発生している場合は、ケムシ類の防除を目的として、ラベルどおり5000倍で散布できます。
その散布によって、同じ新梢にいるシャシャンボツバメスガの幼虫にも作用する可能性はあります。
ただし、シャシャンボツバメスガへの効果が登録上確認・保証されているわけではありません。
エクシレルSEは使用回数が3回以内なので、アブラムシ類やケムシ類など、ほかの登録害虫の発生状況も考えながら、散布時期を慎重に選びます。



その他の適用
カンキツへの適用: アゲハ類、ゴマダラカミキリ成虫、ハマキムシ類、ミカンハモグリガ、吸汁性害虫(カメムシ目、アザミウマ目)等

りんご・おうとう・もも・ぶどうへの適用: コガネムシ類等

エクシレルSE5000倍液の作り方
2リットル作る場合
5000倍液を2リットル作る場合は、エクシレルSEを0.4ミリリットル使用します。
- 使用前に薬剤の容器をよく振ります。
- 水1リットルにエクシレルSEを0.4ミリリットル加えます。
- かき混ぜ棒でよく混ぜます。
- その溶液を2リットル容器へ移します。
- 水を追加し、合計2リットルにします。
- スプレーボトルへ移し、新梢の先端や柔らかい葉へ散布します。

0.4ミリリットルの量り方
0.4ミリリットルは非常に少ない量です。
正確に量るため、1ミリリットル用のシリンジや、細かい目盛りが付いたスポイトを使う方法がおすすめです。
半球形ですり切り1.25ミリリットルの小さじ1/4の1計量スプーンの場合、
半球形ですり切り1.25ミリリットルの小さじ1/4計量スプーンの場合、
底から半分の高さまで入れると 0.3125
計算上は
1.25(ml) × 0.3125 ≒ 0.39(ml) になります
ただし、計量スプーンは製品によって形が異なり、薬剤の粘度や表面張力でも量が変わります。
初めて作る方には、計量スプーンよりも、シリンジなどで0.4ミリリットルを正確に量る方法をおすすめします。


ゼンターリとエクシレルSEの違い
| 比較項目 | ゼンターリ顆粒水和剤 | エクシレルSE |
|---|---|---|
| 種類 | 微生物を利用したBT剤 | シアントラニリプロール剤 |
| ブルーベリーで使用する際の登録害虫 | 果樹類のハマキムシ類 | ケムシ類など |
| 希釈倍数 | 1000倍 | 5000倍 |
| 主な作用 | 薬剤の付いた葉を幼虫が食べることで作用 | 摂食と接触によって作用 |
| 葉への性質 | 主に葉の表面に付着 | 浸達性と局所的な移行性がある |
| 使用時期 | 発生初期、収穫前日まで | 収穫前日まで |
| 使用回数 | 制限なし | 3回以内 |
| シャシャンボツバメスガの登録 | なし | なし |
どちらも、シャシャンボツバメスガ専用の薬剤ではありません。
登録のある害虫を対象として使用基準を守り、観察や被害枝の切除と組み合わせて使うことが大切です。
被害を受けた枝の切り方
先端がしおれた枝を見つけたら、幼虫がいると思われる部分より下で切ります。
切り口の内部が茶色く変色している場合は、まだ食害部分や傷んだ組織が残っています。
切り口を確認しながら、白くきれいな組織が出るところまで、少しずつ切り戻します。
切った枝は、その場へ放置しません。
枝の内部に幼虫が残っている可能性があるため、袋へ入れて処分します。
被害枝を来年実がなる枝へ立て直す
被害を受けた新梢は、失敗した枝として全部取り除く必要はありません。
被害部分を早めに切り戻せば、残った芽から新しい枝を伸ばし、来年の結果枝候補へ育てられる可能性があります。
新梢が60センチほど伸びている場合は、被害部分を取り除いたうえで、付け根から30~40センチ付近にある、外向きの芽の少し上で切ります。
葉の付け根には、腋芽があります。
切り口のすぐ下にある芽と、その下にある二つほどの芽が動けば、一本だった新梢から二本~三本の枝が伸びる可能性があります。
必ず三本伸びるわけではありません。
樹勢、品種、剪定時期、残された生育期間によって、伸びる枝の本数や長さは変わります。
伸びた枝が秋までに十分充実すれば、来年の結果枝候補になります。
実が三倍になる剪定ではありません
枝が三本になったからといって、収穫量が必ず三倍になるわけではありません。結果枝候補を増やしながら、日当たりと風通しの良い樹形を作るための剪定です。
内向きや下向きに伸びた枝、細く弱い枝、同じ位置から混み合って出た枝は、今後の生育を見ながら整理します。

切った健康な枝は挿し木にできる
切り戻した枝のうち、虫の穴や内部の変色がない健康な部分は、挿し木に利用できます。
虫が入っていた部分や、内部が茶色く変色した部分は使いません。
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挿し穂の作り方
- 健康な枝を10~15センチほどの長さに切ります。
- 上の葉を二枚ほど残し、下の葉を取り除きます。
- 残した葉が大きい場合は、葉を半分ほどに切ります。
- 枝の下端を斜めに切ります。
- 1時間ほど水につけて水揚げします。
葉を小さくするのは、葉から水分が失われる蒸散を減らすためです。
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挿し木の手順
- 3号ポットに鉢底ネットを敷きます。
- 鹿沼土の細粒を入れます。
- あらかじめ散水し、用土全体を湿らせます。
- 割り箸などで植え穴を開けます。
- 挿し穂の切り口を傷めないように差し込みます。
- 最後に十分かん水します。
置き場所は、強い直射日光や西日を避けた、明るい日陰です。
発根するまでは、用土を完全に乾かさないように管理します。
約3か月後、新芽が安定して伸び、発根していることを確認できたら鉢上げします。
発根までの期間は、品種、気温、挿し木をした時期、管理環境によって変わります。
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まとめ
シャシャンボツバメスガの幼虫は、柔らかい新梢を食べたあと、枝の内部へ入り、先端の葉をしおれさせます。

被害を減らすポイントは、次のとおりです。
- 新梢の先端を定期的に観察する
- 一本の枝だけがしおれたら、穴や虫のふんを確認する
- 登録のある害虫を対象として、農薬をラベルどおり使用する
- 被害枝は早く切り、白い健全部分まで切り戻す
- 残った芽から新しい枝を伸ばし、来年の結果枝候補へ育てる

ゼンターリ顆粒水和剤は、果樹類のハマキムシ類を対象として1000倍で使用できます。
エクシレルSEは、ブルーベリーのケムシ類を対象として5000倍で使用できます。
どちらにも、適用害虫としてシャシャンボツバメスガという名前の登録はありません。
登録害虫を対象として、希釈倍数、使用時期、使用回数を守って使用し、シャシャンボツバメスガへの効果を保証されたものとして扱わないことが大切です。
薬剤だけに頼らず、こまめな観察、発生初期の散布、被害枝の切除、切り戻しによる枝の立て直しを組み合わせます。
これが、シャシャンボツバメスガの被害を減らし、来年実をつける枝を守るための現実的な対策です。


農薬を使用するときの注意点
農薬の登録内容は変更される場合があります。
使用前には必ず手元の製品ラベルと、農林水産省の農薬登録情報提供システムで、次の内容を確認してください。
- 適用作物
- 適用害虫
- 希釈倍数
- 使用液量
- 使用時期
- 本剤の使用回数
- 有効成分を含む農薬の総使用回数
- 使用上の注意事項
風の強い時間帯は避け、周囲の作物、住宅、洗濯物、通行人などへ薬液が飛散しないように散布してください。
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